1: 諸星カーくんφ ★:2014/03/24(月) 10:11:45.15 ID:
ソース(現代ビジネス、「わき道をゆく~魚住昭の誌上デモ」)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38621
佐藤優さんと知り合って10年になる。その間に佐藤さんから送っていただいた本は、たぶん100冊を超えるだろう。多くは、古今東西の
名著である。
それらの本から私が受けた刺激と恩恵は計り知れない。だが、残念ながら私の知性では歯が立たぬ難解な本や、分厚すぎて
持てあます本がなかにはあった。
2年ほど前に頂戴したフランスの人類学者エマニュエル・トッドの『移民の運命』(石崎晴己・東松秀雄訳、藤原書店刊)もそうだった。
欧米諸国の移民の同化について書かれたものだが、何しろ611ページもある。当時の私は本のテーマにもさしたる興味を持てなかった
ので、そのうち読もうとほったらかしにしておいた(佐藤さん、ごめんなさい)。
しかし昨年、在特会のヘイトスピーチを目の当たりにして心境が変わった。ネトウヨはレイシズム(人種・民族差別)の虜になっている。
では、レイシズムとは何か。ネトウヨを突き動かす激しい憎悪の正体は何かというと、さっぱりわからない。
「他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ。敵の神をこそ撃つべきだ。でも、撃つには先ず、敵の神を発見
しなければならぬ。ひとは、自分の真の神をよく隠す」
これはフランスの詩人ヴァレリーの呟きらしいがと断って、太宰治が『如是我聞』の冒頭に掲げたフレーズである。相手の論理や
感情の核心を理解せずに批判しても意味がないということだろう。
そうだ、ネトウヨの〝神〟を見つけなければ何も始まらぬ。
そのとき頭をよぎったのが『移民の運命』だ。ヒントがあるかもしれないと思って頁をくった。だが、すぐ眠くなる。数日たつと内容を
忘れるので、始めから読み直し。そうこうするうち『アンネの日記』連続破損事件が起きた。
ナチスによるホロコーストはレイシズムの極みだ。その犠牲の象徴の『アンネの日記』と関連本を300冊余も破るということは、
レイシズムの虜になったナチス崇拝者か、その影響下にある者の仕業だと考えるのが自然だろう。
私は事件を契機に真面目に『移民の運命』を読み始めた。そうしたら、やっぱりヒントが見つかった。いや、ヒントどころか、レイシズム
が生まれる構造がわかりやすく解き明かされていた。
それだけではない。私が長いこと抱え込んでいたさまざまな問題(たとえば部落差別はなぜなくならないのかという疑問)に対する
答えも書かれていた。なぜもっと早く読まなかったのだろうか。
トッドの理論は、長い年月をかけて作られた家族制度が人々の無意識の価値観を形作るという考えに基づいていた。彼は西欧の主な
家族制度を4つの型に分類しているが、煩雑を避けるため2つの対照的な型だけをご紹介する。
〔平等主義核家族=北フランス、南北イタリアなど〕
子が結婚すると親の家を離れて独立するので父と子の関係は自由主義的だ。また遺産相続で兄弟の平等を厳密に守ろうとするので
兄弟関係は平等主義的になる。この家族システムが育む価値観は自由と平等。人々には人間は生まれながらに平等だと信じる傾向が
ある。自由と平等を掲げるフランス大革命がパリ盆地で起こったのはこのためだ。
〔直系家族=ドイツなど〕
子のうち1人(年長の男子が多い)だけを跡取りとして結婚後も親の家に同居させ、遺産を相続させる。他の子は遺産相続から排除され、
やがて家を出なければならぬ。そのため父と子の関係は権威主義的で兄弟関係は不平等主義的だ。この家族システムが育むのは
権威と不平等。人々は、人間は互いに平等ではなく、「差異」があると信じる価値観をすりこまれる。
(>>2
以降に続く)
【
【社会】ネトウヨをレイシズムに突き動かす憎悪の正体…自ら差異を作り、その差異を憎む、矛盾と緊張をはらんだ日本の家族システムにある
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ソース(現代ビジネス、「わき道をゆく~魚住昭の誌上デモ」)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38621
佐藤優さんと知り合って10年になる。その間に佐藤さんから送っていただいた本は、たぶん100冊を超えるだろう。多くは、古今東西の
名著である。
それらの本から私が受けた刺激と恩恵は計り知れない。だが、残念ながら私の知性では歯が立たぬ難解な本や、分厚すぎて
持てあます本がなかにはあった。
2年ほど前に頂戴したフランスの人類学者エマニュエル・トッドの『移民の運命』(石崎晴己・東松秀雄訳、藤原書店刊)もそうだった。
欧米諸国の移民の同化について書かれたものだが、何しろ611ページもある。当時の私は本のテーマにもさしたる興味を持てなかった
ので、そのうち読もうとほったらかしにしておいた(佐藤さん、ごめんなさい)。
しかし昨年、在特会のヘイトスピーチを目の当たりにして心境が変わった。ネトウヨはレイシズム(人種・民族差別)の虜になっている。
では、レイシズムとは何か。ネトウヨを突き動かす激しい憎悪の正体は何かというと、さっぱりわからない。
「他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ。敵の神をこそ撃つべきだ。でも、撃つには先ず、敵の神を発見
しなければならぬ。ひとは、自分の真の神をよく隠す」
これはフランスの詩人ヴァレリーの呟きらしいがと断って、太宰治が『如是我聞』の冒頭に掲げたフレーズである。相手の論理や
感情の核心を理解せずに批判しても意味がないということだろう。
そうだ、ネトウヨの〝神〟を見つけなければ何も始まらぬ。
そのとき頭をよぎったのが『移民の運命』だ。ヒントがあるかもしれないと思って頁をくった。だが、すぐ眠くなる。数日たつと内容を
忘れるので、始めから読み直し。そうこうするうち『アンネの日記』連続破損事件が起きた。
ナチスによるホロコーストはレイシズムの極みだ。その犠牲の象徴の『アンネの日記』と関連本を300冊余も破るということは、
レイシズムの虜になったナチス崇拝者か、その影響下にある者の仕業だと考えるのが自然だろう。
私は事件を契機に真面目に『移民の運命』を読み始めた。そうしたら、やっぱりヒントが見つかった。いや、ヒントどころか、レイシズム
が生まれる構造がわかりやすく解き明かされていた。
それだけではない。私が長いこと抱え込んでいたさまざまな問題(たとえば部落差別はなぜなくならないのかという疑問)に対する
答えも書かれていた。なぜもっと早く読まなかったのだろうか。
トッドの理論は、長い年月をかけて作られた家族制度が人々の無意識の価値観を形作るという考えに基づいていた。彼は西欧の主な
家族制度を4つの型に分類しているが、煩雑を避けるため2つの対照的な型だけをご紹介する。
〔平等主義核家族=北フランス、南北イタリアなど〕
子が結婚すると親の家を離れて独立するので父と子の関係は自由主義的だ。また遺産相続で兄弟の平等を厳密に守ろうとするので
兄弟関係は平等主義的になる。この家族システムが育む価値観は自由と平等。人々には人間は生まれながらに平等だと信じる傾向が
ある。自由と平等を掲げるフランス大革命がパリ盆地で起こったのはこのためだ。
〔直系家族=ドイツなど〕
子のうち1人(年長の男子が多い)だけを跡取りとして結婚後も親の家に同居させ、遺産を相続させる。他の子は遺産相続から排除され、
やがて家を出なければならぬ。そのため父と子の関係は権威主義的で兄弟関係は不平等主義的だ。この家族システムが育むのは
権威と不平等。人々は、人間は互いに平等ではなく、「差異」があると信じる価値観をすりこまれる。
(>>2
以降に続く)